窓が語る都市の記憶:ロンドン大火災が変えた建築デザインの物語

ロンドンの大火災と都市計画

ロンドンの街を歩いていると、通りに面した窓が、統一感を持ったデザインであることに気づきます。
壁面から少し引っ込んだ窓枠、その下に付けられた特徴的な出っ張り(シル)。
これらは単なる装飾ではなく、ロンドン大火災という悲劇から生まれた先人の知恵であり、建築とは、正にその時代の課題に対する解決策の集大成だということに驚きます。

  1. ロンドンの大火災と都市計画
  2. 大火災がもたらした建築革命:ロンドン建築の起源
    1. 防火から生まれた美的価値 
  3. 歴史が生む「街の個性」
  4. 記憶を継ぐ建築デザイン楽しむ

大火災がもたらした建築革命:ロンドン建築の起源

1666年のロンドン大火災後、ロンドンは文字通り灰の中から生まれ変わりました。

新たに制定された火災法により、

  • 木造からレンガ造りへの転換
  • 道路幅の拡大建物間隔の確保
  • 窓のデザインの変更

が行われました。現在のロンドン建築の始まりです。

防火から生まれた美的価値 

さて、現代のロンドンで「上質な窓」とされる特徴をご存知でしょうか?

  • 壁面からの適度な奥行き
  • 整った比率のシル

Old Street駅すぐ近くのMorris+Coによる建物

これらの要素は、もともと防火という実用的な目的から生まれました:

  • 奥まった窓枠:火炎の直接的な影響を軽減
  • シル:上昇する火炎から窓枠を保護

チューダースタイルの窓。シルはなく、窓枠も奥まっていません。
画像はこちらから。

大火災後の再建過程で確立されたこれらの防火設計は、後のジョージアン様式の美学的基盤となりました。シンプルで洗練されていて、現在でもとりわけ建築家などの玄人好みの様式です。

歴史が生む「街の個性」

ロンドン大火災の後、統一された建築規制の導入により、街全体が秩序ある景観を形成しました。これは単に安全性を高めただけでなく、「ロンドンらしさ」を定義することにもつながりました。赤レンガの家々や白い窓枠、シンプルながらも品格あるジョージアン様式は、歴史的にも文化的にもロンドンのアイデンティティの象徴となっています。

当時の規制が安全性を高めるためのものであったのに対し、現代の建築家たちはそれを美学の基盤として発展させています。
たとえば、窓の奥行きやバランスの取れたプロポーションは、現在の高級住宅設計にも活かされています。
一見シンプルなデザインの背後に、先人たちの知恵や努力があると考えると感慨深いものがありますね。

Proctor Matthewsのケンブリッジの再開発。窓が最低でもレンガ半分分くらいセットバックしているのがわかります。画像はこちらから。

記憶を継ぐ建築デザイン楽しむ

街を歩きながら、私は常にキョロキョロと窓を観察してしまいます。(私の夫は「また窓の話?」と呆れ顔です)
この窓引っ込みが十分で美しいな、とか、こっちは引っ込みがなくてダサく見えるな、なんでこうなってるのかな?などなど。


一つ一つのデザインには、この都市の記憶と知恵が刻まれています。

災害という試練を乗り越え、そこから美を見出してきたロンドンの建築史。その静かな証人として、今日も無数の窓が街を見守っています。

歴史を感じるジョージアン様式の窓や建築を、ただ通り過ぎるだけではもったいない!
ロンドン中心部では、ベッドフォード・スクエア、リージェンツパーク周辺やベイズウォーターなどで美しいジョージアン建築を見ることができます。

ベッドフォード・スクエアには、有名な建築大学のAAスクールもあります。AAスクールは、ジョージアンハウス数件を改修して学校になっているみたいです。(卒業展を見に行ったりや友達が通っていたので、昔ちょっとだけ出入りしたことがあります)トッテナム・コート・ロードのすぐ裏になります。

有名な首相官邸。通称10 Downing Streetと呼ばれています。
こちらもジョージアン建築。画像はWikipediaから。

次回歩くときには、「この窓には、先人が未来へと繋げた安全のための知恵が詰まっている」ことを、ぜひ想像してみてください。
ただの古びた窓も、少し特別なものに見えるかもしれません!

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